2025/09/10 15:00
かつては“甘口ワイン”のイメージが強かったドイツワインですが、近年は大きく進化しています。
温暖化の影響や栽培・醸造技術の進歩、生産者の努力により、シャープな酸味とミネラルを活かした辛口のワインが高く評価されるようになりました。
今回は、そんな「ドイツワイン」について詳しく解説し、おすすめのワインをご紹介いたします!ぜひ最後までご覧ください。
ドイツの基本情報

ドイツはフランス、オーストリア、スイスなど9か国と国境を接する国で、国土面積は約35万7千㎢、日本のおよそ95%の広さです。人口は約8,400万人と、EU加盟国で最大の人口を誇ります。
ドイツはヨーロッパのワイン生産国の中でも、イギリスに次いで北に位置する伝統的ワイン生産国です。葡萄畑は北緯47~52度に広がり、これは樺太(サハリン)とほぼ同じ緯度にあたります。栽培面積はフランス・ボルドー地方の約9割に相当し、国際的にはギリシャに次ぐ第18位です。
1960年代から70年代にかけての高度経済成長時代には、甘口ワインがブームとなり、葡萄畑も大幅に拡大しました。しかし、1990年代以降はドイツ国内での食事のスタイルの変化や世界的な赤ワインブームの影響もあり、食事に合わせやすい辛口ワインの需要が高まっていきました。
ドイツワインのスタイル

ドイツワインにはEUの規定に基づく、残糖値に応じた表記があります。

なお、ラベルへの表記は任意のため、記載がない場合もあります。しかし、飲みたいスタイルに合わせて選ぶ際の目安になるため、ぜひ参考にしてみてください。
ドイツワインの葡萄品種

ドイツでは生産地域ごとに栽培可能な品種が定められており、各地方で100種類以上の品種が栽培されています。フランスやイタリアのように、原産地呼称ごとの使用品種の割合の規定はなく、単一品種で醸造・瓶詰めされることが多いのが特徴です。
白葡萄
○リースリング
ドイツで最も多く栽培されている品種で、全体の約23%を占めます。レモンやグレープフルーツ、青リンゴ、アカシア、菩提樹などの香りがあり、シャープで豊かな酸味が特徴です。
○ミュラー・トゥルガウ
リースリングとマドレーヌ・ロイアルの交配品種。1995年頃まではリースリングを上回る栽培面積を誇っていましたが、徐々に減少傾向にあります。リースリングよりもやや抑えめの酸味で、熟れた桃やレモン、ドライアプリコットなどの香りが特徴です。
○ヴァイスブルグンダー
ピノ・ブランのドイツ名。近年、ヴァイスブルグンダーやグラウブルグンダー(ピノ・グリ)、ソーヴィニヨン・ブランなどの、フランス系の白品種が増加傾向にあります。白桃や白い花、青リンゴ、ライム、火打石などの香りがあり、デリケートで繊細な味わい。
黒葡萄
●シュペートブルグンダー
ピノ・ノワールのドイツ名。ドイツ南部やアールなどの温暖な生産地でよく栽培されており、全体の約11%を占めます。甘いレッドフルーツの風味と、繊細な土と葉のアロマが特徴です。
●ドルンフェルダー
ヘルフェンシュタイナーとヘロルドレーベの交配品種。シュペートブルグンダーに次いで人気の品種ですが、最盛期に比べるとやや減少しています。ベリー系のフルーティーさとフローラルな香りを併せ持ち、濃い色調ながらもタンニンや酸味が滑らかなのが特徴です。
ドイツワインの主要産地

ドイツには全部で13のワイン生産地域があります。旧西ドイツの11生産地域はフランス寄りの南西部に位置し、すべてライン川とその支流に沿って分布しています。旧東ドイツの2生産地域はチェコ・ポーランド寄りの東部にあり、エルベ川とその支流に沿って広がっています。
ここからは、ドイツワインの主要な産地をいくつかご紹介していきます。
-ラインヘッセン
ドイツ最大のワイン生産地で、温暖で肥沃な土地のため農業が盛んな地域です。「線の丘のある地方」としても知られる丘陵地帯に広がります。
1980年代までは大量生産の甘口ワイン産地でしたが、この地のテロワールの潜在能力を確信した若手醸造家たちが、2001年に団体“Message in a bottle”を結成。互いのワインについて意見交換を行い、高品質なワイン造りに取り組むようになりました。彼らの造る辛口のリースリング、シルヴァーナー、シュペートブルグンダーなどの素晴らしさが起爆剤となり、高品質なワイン産地へと変貌しました。
-ラインガウ
葡萄畑の約77%をリースリングが占め、リースリングの銘醸地として知られています。
ラインガウには、ドイツの葡萄栽培醸造技術を研究し若手醸造家を育成するガイゼンハイム大学があります。近年は有機栽培の研究指導や気候変動の葡萄栽培への影響などの研究を行っており、ここでワイン造りを学ぶ学生は国外の醸造所で研修した経験を有する者が多く、卒業生同士で若手醸造家団体を結成するなど、近年のドイツワインの新たなムーブメントの震源地となっています。
-モーゼル
モーゼル川の流域に広がる生産地。畑のある斜面の約4割が、斜度30%を超える急斜面となっています。
ラインガウと並ぶリースリングの銘醸地として知られ、葡萄畑の60%をリースリングが占めます。かつては上品な果実味が魅力の甘口産地として知られていましたが、近年はテロワールを活かした辛口からオフドライのワインが増え、全体の約4割を占めています。また、アイスヴァイン(凍結した葡萄をそのまま搾汁して造られるワイン)やトロッケンベーレンアウスレーゼ(貴腐葡萄で造られるワイン)などの甘口も、この地特有のエレガントな酸味により、特別なワインとして愛されています。
-ファルツ(プファルツ)
ラインヘッセンの南に地続きで広がる、ドイツで2番目に大きな生産地域。ドイツで最も温暖な気候で、葡萄以外にも桃やイチジクなど、様々な果樹の栽培にも適した地域です。かつては、ラインヘッセンと同様に大量生産の甘口ワインが盛んに造られていましたが、1990年代後半からは伝統品種による辛口ワインで、テロワールを表現することが目指されるようになりました。
おすすめのドイツワイン
冷涼な気候から生まれる透明感のある味わいが魅力のドイツワイン。
かつての「甘口ワイン」のイメージを覆し、現在世界的に注目されているのが、キリっと引き締まった辛口タイプのドイツワインです。
そんな辛口ドイツワインの中でも、今回は大阪万博のドイツパビリオン内レストランで提供されている注目の1本をご紹介します!
「エステート・オーガニック・リースリング/ドライスィアッカー」
ドイツ最大の産地・ラインヘッセンのワイナリー「ドライスィアッカー」が造る辛口リースリング「エステート・オーガニック・リースリング」です。ドライスィアッカーは、先述の団体“Message in a bottle”のメンバーでもあります。
フレッシュな柑橘系果実と白い花の香りに、しっかりとした酸味を感じ、柔らかなミネラルとスパイス感がバランスよく調和しています。ソーセージはもちろん魚介料理との相性も抜群です。
ドイツワインの新しい魅力を知るのにふさわしい「エステート・オーガニック・リースリング」を、ぜひお試しください♪